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医局を辞めてよかった話。専門医なし・3年目の私が唯一抱える不安

医局を辞めてフリーランス医師になる選択を象徴する、机の上に並ぶ病院の鍵とノート、湯気の立つコーヒー
  • 身を削り続ける今の辛い状況がいつまで続くか分からない
  • 手取りは減ったのに責任と仕事量は変わらない
  • このまま医局員を続けた先に未来はあるのか

昨今、医局員からはこのような不安をよく聞きます。

医師を取り巻く環境の悪化が続いている今、医局に縛られ息苦しい生活を余儀なくされている医師が増えています。

私は後期研修を終えた直後に、専門医を持たずに医局から抜けました。フリーランス医師としては今年で3年目です。

※ 当サイトでの「フリーランス医師」の定義はこちら

この記事は、医局を抜けてよかったと言い切れる理由と、今後一生付きまとうであろう不安について書いています。

この記事を読めば、フリーランス医師になるとどうなるのかをイメージできます

特に医局員としての生活に限界を感じている方は最後まで読んでください。

目次

未来の生活と収入に希望が持てず退局

医局からの呼び出しに席を立った夜、誕生日ディナーの食卓に残されたチーズケーキと赤ワイン、画面が光るスマートフォン

私が医局を抜けることを意識したきっかけは、1年目の結婚記念日に勤務先から呼び出されたことです。その日は有給休暇で妻とデート、夕食は数か月前から予約していた寿司屋でコースの予定で、妻も私も心待ちにしていました。

夕食中に勤務先から、担当患者の急変のためすぐに病院に来るようにとの連絡が入りました。人命第一、ましてや担当の急変となれば職場へ駆けつけるのは当然です。寿司屋の大将に頭を下げつつ、コースの途中で妻を残し病院へ直行。

一通りの対応を終え、休憩室で缶コーヒーを一口飲んで、ふと「俺、何やってんだろう」と頭に浮かびました。

私が帰宅したのは日付が変わった頃。キッチンの電気をつけると、私が病院へ向かった後に提供された寿司が寿司折りに詰められていました。

医局からの呼び出しで深夜に帰宅した夜、誰も座っていない暗いキッチンの食卓に残された一人分の夕食

寿司折りを頂きつつ妻から、私が去った後の話を聞いていました。「自分の人生の大切な場面で、こんなことが繰り返されるのではないか」とゾッとしたのを今でも覚えています。

加えて、苦手な上司に日々ストレスを抱えていたら胃潰瘍にもなりました。

医局人事なのですぐに逃げることは当然できません。物理的に近づかないようにはできても、どうしても関わらざるを得ないときもあります。

数年後に「医師の働き方改革」が始まると知り、医師の待遇がどんどん悪くなっていくであろうと感じました。現状はみなさんが知るとおりです。

これらの結果、医局員として働き続ける未来を想像できなくなり、私は医局を抜けることを決意しました。

医局を辞めてよかったと心から思う5つの理由

医局を辞めた後の明るい朝、窓を開ける手と風にふくらむ白いレースカーテン、窓辺の小さな植木鉢

医局を抜けることに最初こそ抵抗はあったものの、今では辞めてよかったと思っています。その理由は次の5つです。

・手元に残るお金が増える

・給与計算がしやすい

・当直・オンコールがない

・いろんな場所に行ける

・時間の主導権が自分に戻る

手元に残るお金が増える

フリーランス医師になって手元に残るお金が増えた様子を表す、布の上に積み上げられた銅貨の山

医局員の頃よりも単純に給料が増えます。またフリーランス医師が加入するのは基本的に国民健康保険+国民年金なので、健康保険+厚生年金よりも保険料の負担が少ないです。

つまり給料が増えて保険料の負担は減るので、同じ額を医局員として稼いだ場合と比較して手残りが多くなります

給与計算がしやすい

フリーランス医師として給与計算がしやすくなったことを表す、机の上の電卓と給与明細、革表紙の帳簿とペン、コーヒーカップ

給料・手取りを計算しやすく、1年間の家計管理の予測が容易です。医局員の頃は月の給料が残業時間で変動していました。そのため例えば、出費の多い月と残業が少ない月が重なると、精神的に落ち込んでいたことも(笑)。

家計収支の見通しが立てやすくなるのは、意外なメリットでした。

当直・オンコールがない

当直・オンコールがなく気持ちの良い朝を迎えている様子、光の差す食卓に並ぶトーストとコーヒー、野の花を活けた一輪挿し

フリーランス医師になってからは外来業務しかしていないので、当直で何度も起こされる・病院から急に呼び出されるといった生活とは無縁です。もちろん当直・オンコール対応のバイトもあるので、好きな方はそうした案件に応募すれば良いと思います。

いろんな場所に行ける

複数の定期非常勤先を掛け持ちしているので、毎日違う方面に行けて飽きません。それぞれに色んな飲食店があるので開拓しがいがあります。昼食のレパートリーにも事欠かないので、お昼の時間が楽しみで出勤の足取りも軽くなります。

時間の主導権が自分に戻る

フリーランス医師として時間の主導権を取り戻した平日、机に開いた手帳と小さな目覚まし時計、ドライフラワー
  • 家族に時間を割きたい
  • 入り用だからお金を稼ぎたい
  • 睡眠第一だから当直はやりたくない

そんな価値観や状況に合わせて、働く日数や密度を変更しやすいです。私の場合、妻がワンオペ育児にならないように仕事は週4.5にし、当直・オンコールのバイトは入れないようにしています。

それでも消えないたった1つの不安

フリーランス医師3年目でも消えない漠然とした不安を象徴する、額縁を外した跡だけが残る壁と小さな釘、差し込む斜めの光

今のまま家族を養い続けられるか」という不安が、フリーランス医師になってからはずっとまとわりついています。この不安の根底にあるのは次の5つです。

・専門医なし

・健康面のリスク

・医師の需給バランス

・インフレ

・学習機会が乏しい

専門医なし

専門医を持たずに医局を抜けた自分自身を重ねる、霧のかかる道に立つ三方向の木の道標

私は後期研修を修了していますが、専門医は取得せずに医局から抜けました。それから3年間、専門医の有無を理由に不採用となったことは今のところありません。

しかし今後の制度改正によって、専門医がないために働きづらくなる可能性はあります。

健康面のリスク

フリーランス医師の健康面のリスクを象徴する、廊下の隅に置かれた使い込まれたランニングシューズと壁のフックに掛けられた紺色のジャケット、窓から差し込む暖かな光

フリーランス医師にとって体調管理は最重要任務です。勤務医の場合と違い、自分の欠勤を同僚がカバーしてくれることは基本ありません。

特に1診体制のクリニックでは事態は深刻です。ドクター不在では営業そのものができません。代診医を自分で探すのはもちろん、クリニック側も探してくれますが、大きな迷惑をかけてしまいます。

年齢に伴い、どうしても体調は崩しやすくなります。子供から風邪をもらうこともあるでしょう。

しかしどんな理由であれ、欠勤が増えると信用に関わってきます

医師の需給バランス

医師の需給バランスの崩れを象徴する、左右の皿で大きく傾いた木の天秤

医師が増えることで今後、バイトの条件が悪化していく可能性があります。

医師のバイト代が高いのは、単に需要に対し供給が少ないからです。国が保険点数を決めてはいるものの、医師への報酬を決めているのは雇い主です。バイトに来てくれる医師が少ない場合、多少単価を上げてでも医師に来てもらおうとします。ここには市場原理が働きます。

しかし厚生労働省の試算では、2029年頃には医師の需給が均衡すると推計されています。バイトに対応できる医師が増えれば、バイト代は下がっていくと考える方が自然です。実際に2020年代初期と比較すると、バイトの条件は悪くなっています。

※出典:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 第5次中間とりまとめ」2022年2月7日公表(2026年4月22日閲覧)。

「収入の多さ」は近い将来、フリーランス医師のメリットではなくなるかもしれません。

インフレ

インフレで生活費が目減りしていく不安を表す、中身が底にわずかしか残っていないガラスの貯蔵瓶

医師全体の給料が上がっていくことは考えにくいです。医療費がどんどん削られている現代において、医師の給料のベースアップを想像するのは無理があります。

一方で2023年には、日本経済が約40年ぶりにインフレに突入しました。人類の歴史は超長期視点ではインフレであり、日本のバブル崩壊後も世界経済はインフレでした。日本のデフレ期が例外だっただけです。インフレというトレンドは日本でも今後続くと考える方が自然でしょう。

物価が上がり続ける中で給料の上がらない業種で働くことは、購買力が毎年落ちていくことを意味します

学習機会が乏しい

フリーランス医師として一人で学び続けることの孤独を表す、布の上に置かれた白紙のカードと万年筆

フリーランス医師になると学習の機会が乏しくなります。医局員は上司から指導してもらえる機会も多いので、新しい知識・技術を身につけやすいです。また最新の医療情報も医局員のほうが手に入りやすいでしょう。

フリーランス医師は知識・技術を身につけて市場価値を上げる機会が乏しく、何も手を打たないでいると、どんどん下がっていくと思います。

医局員としての生活に疑問・違和感がある医師へ

医局員としての生活に違和感を抱える医師へ、家族と過ごす時間を取り戻した玄関に並ぶ大人の革靴と子供のスニーカー

フリーランス医師になることは万人におすすめできるわけではありません。医師としてのキャリアを諦める・終わらせることに近いため、性格や価値観によって向き・不向きがあります。

ただ、医局員としての人生に未来が見えないなら、医局に所属することは自分の性格・価値観と合っていないのかもしれません。合わない環境に身を置き続けると、人生は壊れていきます。

もちろん日本の医療を支えるうえで医局員の存在は欠かせません。むしろ医局員こそが日本の医療を支えています。正論を言うのであれば、患者のために医局員として医学に骨を埋めるのが医師として正しい姿勢なのでしょう。

日本の医療を支える医局員の存在を象徴する、深夜の机に置かれた聴診器と書類、奥のベッドサイドへ向かう白衣の医師

しかし医師にも、1人の人間としての生活・人生があります。自分を不幸にしてまで他人に貢献する必要はないと思います。

もし医局員としての人生に違和感があるなら、フリーランス医師になる道もあるということを知っておいてください。選択肢を持つだけでも、いくらか気持ちが軽くなります。

まとめ

この記事では、医局を辞めてよかったと思える理由と、フリーランス医師3年目でも消えないたった1つの不安について、私自身の経験をもとにお伝えしました。

今のところ、医局を出たことで得たもの(お金・時間・選択の自由)は、抱えている不安よりも大きいと実感しています。もちろん今後は分かりませんし、フリーランス医師として働く道が、すべての医師に合うとも思いません。性格や価値観によって、向き・不向きが必ずあります。

ただ、大切なのは「医局の中で生きる」以外の選択肢があると知っておくことです。知っているだけで、今のまま続ける判断も、抜ける判断も、自分の意思で選びやすくなります。

医局員としての毎日に違和感や限界を感じているなら、一度立ち止まって、自分の人生で大切にしたいものを見つめ直してみてください。あなたの人生を生きるのは、ほかでもないあなた自身です。

この記事が、医師としての働き方を考え直すきっかけになれば幸いです。

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